人気ブログランキング | 話題のタグを見る

染まったから染めるへ

3月23日
「最後にだますのは自分」ということわざをご存知でしょうか。
これは,板倉聖宜著『発想法かるた』(仮説社発行)の中の言葉です。
おりぞめというものづくりの修業で100枚作ったナナロウトから人に教えるようになるヤロウトになるときに,わたしが気をつけていることの一つです。
それは〈自分がたどってきた道にだまされない〉ということです。
A地点からB地点へ行くとき,さまざまな道があります。
簡単に分けてしまえば,真っ直ぐに行く道と曲がりくねった道とあります。
ある方法を発見した時,それをおしえようとするとき,自分と同じ道をたどらせようとしたくなります。
もちろん,それがいいときもありますが,別の道の方がたどりやすかったり楽しかったりするのです。
その時に,自分のたどった道と違うからという気持ちだけで,他の道を選べないことがあります。それが〈最後にだますのは自分〉ということです。でも,「そうかな,いつも自分をだますとは限らない」という人には,言葉を少し変えることをおすすめします。
「最後にだますのは自分かも知れない」あるいは「自分をだましているかもしれない」
これならどうですか。いつでも,その気持ちを持って確かめていくことが〈ナナロウトからヤロウトへの道〉とわたしは思っています。
(ちなみに,『発想法かるた』の中でわたしが一番愛用しているのは,〈どちらに転んでもシメタ〉。どんな状況であっても,自分にとってはチャンスに決まっている,ということです。この言葉のおかげで,まあ,なんとかやってます。ありがたいです。)

道の話に戻します。
真っ直ぐな道と曲がりくねった道。
何となく,〈まっすぐな道の方がいい〉と思っていないでしょうか。
いや,「曲がりくねった方がいい」という人がいるかもしれませんが,その人も普段歩くときは,ほとんどは最短距離を行こうとしないでしょうか。〈曲がりくねった方がいい〉派の人たちも,日常の行動は〈真っ直ぐ派〉ではないでしょうか。
たとえば,東京から大阪まで車で行くとしても,ほとんどは東名高速道路か,回り道するといっても中央道ぐらいではないでしょうか。東北道を経由して山形・新潟・富山・福井を経由して大阪まで行こうとする人はまずないでしょう。途中に用事がなければ,そんなことは選択肢にもないと思います。
〈真っ直ぐの方がいい〉ということは何となくの常識になっていないでしょうか。
しかし,新しいものを作りだす時は,一概に真っ直ぐとは言えません。どちらかと言えば,曲がりくねっています。あとから見れば,東京から東北,いや時にはアメリカ経由で大阪にたどり着くなんていうこともあります。
しかし,そのものづくりを人に教えるときは,わざわざ,アメリカ経由で教えたりはしません。その道しかなければ仕方ありませんが,一度たどりつけば,もっと真っ直ぐな道が見つかることもあります。それがたのしければもっといいですが,まあ,それは置いておくとします。
〈真っ直ぐか曲がりくねった道か〉ということではなく,どちらもある,どちらも必要ということです。
けむに巻いてしまうかもしれませんが,〈絢香×コブクロ〉の「WINDING ROAD」という歌には,曲がりくねった道を歩いて行った,その先に,こうあります。
「振り返ればただ真っ直ぐに伸びていた 今日までを辿る足跡」

〈曲がりくねった道が真っ直ぐ〉,なんだかわけのわからないことが本当のことかもしれません。

さて,ここからが今日の本題。
わたし自身がいろいろなことを発見したり,発明したりというのはほとんど,ビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」というタイトルと同じで,短く,ストレートではなくて,長く曲がりくねっています。
この歌の歌詞の中に
「The many ways I've tried」

というのがあります。日本語でいえば,〈いろいろな方法を試した〉ということです。
本当にこの通りだと思います。しかし,教えるときは,いろいろな方法を教えるのではなくて,成功する一つの方法を教える,ということになります。
それで,わたしが教えるときは,はじめからその一つの方法でたどり着いたように思われるかもしれませんが,そんなことはありません。と言っても,いつもは,藪の中を歩いているようなものなので,あっちに行ったりこっちに行ったり,そのすべてを記録しているわけではありません。
しかし,今日,その〈The many ways I've tried〉というのを記録することができたので載せておきます。
染まったから染めるへ_f0213891_18441225.jpg

上の画像は1番から9番までつくったものです。
五つ折りの連続を適当に作って,染めてみるとなんとサクラに染まっています。しかし,これをよく見ると,五つ折りと四つ折りが混ざっています。
それで五つ折りの連続折りをていねいにして,バイスの種類や挟む場所を変えて,〈many ways〉をしていくことで6にたどり着きました。ここまでくればあとは微調整で位置を変えたりしながら染めてみました。それが,7,8,9です。3枚続けてサクラ風の模様ができたのでこれは〈染めることができる〉と言えます。
1番の〈サクラに染まった〉から7,8,9番の〈サクラに染める〉へたどり着きました。

1,2,3,5,6番と4,7,8,9番のちがいに気がつかれたでしょうか。
これ,気にならない人は気にならないのですが,気になる人はとても気になるのです。
それは,染め紙の真ん中あたりの模様と両端の模様です。
どうですか,気になりますか。それとも,何も気にならないでしょうか。
気にならない人は,こういわれると気になるかもしれません。でも,気にならなくてもおりぞめは楽しめます。
気になってもならなくてもどちらに転んでもシメタ。
ということで,これは気になる人のために,これはここで置いておきます。

7,8,9番もよく見ると模様の大きさがそろっていません。これは,全く同じにするのなら印刷した方がいいと思いますが,同じに近づける努力は,連続に折るときにそれはていねいにすることでできることなので,〈極める〉ということで機会があれば取り組んでみたいと思います。多少の大きさの違いや模様の微妙な違いはあるけれど,だいたいはサクラ風の模様ができる,ということでわたしとしてはOKにしています。

五つ折りの連続模様をつくるための折り方の型紙を載せておきます。
型紙を見ただけでわかったような気になるかもしれません。まあ,それも仕方ありません。
ただ,やってできなかったからと言って,それは型紙のせいではないかもしれない,と思ってください。
きちんと型紙を使っていないかもしれないからです。
〈型紙〉と〈型紙の使い方〉はセットになっています。
ちなみにわたしは,最初は,図の中にあるABCのすべて線の折り筋をつけて,それぞれを図の通りに山折り・谷折りにしてから折り畳みました。赤が山折り線で緑が谷折り線です。
今は,慣れてきたので,型紙を使って,Aの折り筋をつけて折り,Bの折り筋をつけて折り,畳みながらCのところを折っているという風になってきています。ていねいにするときはABCと折り筋をつけてからしていることは報告しておきます。
染まったから染めるへ_f0213891_18442237.jpg

下の方は,五つ折りの数を一つ増やそうとすれば,折り方が上と同じというわけにはいきません。それで載せてあります。もっと言えば,1:8の紙に3回五つ折りを入れるというのが特殊で下の折り方が一般的と言えます。
折り方の考え方と折り筋を赤と緑で表現するなどは,ポール・ジャクソン (著), 三谷 純(日本語版監修者) (監修), 高城恭子 (翻訳)『 デザイナーのための折りのテクニック 平面から立体へ 』(文化出版局発行)から学びましたが,この折り畳み方自身は調べた範囲内ではありませんでしたので,わたしのオリジナルと思います。
どこかにすでに発表されている場合は教えてください。
ちなみにこの五つ折りの連続した折り畳み方も相当曲がりくねった道だったことは報告しておきます。それを型紙にすることでその道をたどらなくてもたどり着くことができるようになった,とわたしは思います。



by orizome | 2013-03-23 20:38 | 紙を染める | Comments(0)

紙に染料をつけて染めるものづくりの<おりぞめ>噺。ものづくりはたのしさつくり。おりぞめ染伝人(山本俊樹)メールアドレス orizome●live.jp
by orizome

以前の記事

2024年 12月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月

最新のコメント

ご無沙汰しております。私..
by 山の住人 at 00:11
ありゃっ! 「楽」だと思..
by 戸田道代 at 16:28
こんな切りそめ紙もあった..
by 戸田道代 at 11:22
> 船迫新治さん あり..
by orizome at 14:52
たまモノが! 出版..
by 船迫新治 at 12:15
横山さま ありがとうござ..
by orizome at 18:57
春の校内掲示はたまモノで..
by 横山裕子 at 16:50
> 戸田道代さん 書き..
by orizome at 05:10
> 船迫新治さん あり..
by orizome at 05:09
書きたくなる紙がステキす..
by 戸田道代 at 17:14

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ファン

ブログジャンル