人気ブログランキング | 話題のタグを見る

授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート

2021年3月10日
本題の前に一つ。
このところ,ステンドおりぞめの面染めのリダイから始まり,〈半分,黄色。〉〈トギレ,X格子〉,そして,〈絞りおりぞめした模様(ハート)をリダイする〉という所にたどり着くなど,そこだけ見ていると染めるのにためらいがないように見えますが,実態はそうではありません。けっこう,勇気を出して取り組んでいます。
2012年のこのブログの記事に「〈染めるには勇気が必要〉という話」を書いています。

その中で〈勇気〉についてこう書いています。
そんな(これでいいのかという)思いに対して〈これでいいのだ〉と思えるほどの自信はありません。それでもするためには<勇気がいる>というわけです。〈失敗するかもしれない〉という思いに対するあきらめ,〈失敗しても成功してもどちらも自分の作品〉と引き受ける気持ち,それらを〈勇気〉と呼べる,わたしはそう思っています。
〈勇気〉というと剣を振り回すという勇ましいイメージがするかもしれませんが,わたし自身は剣(自分)を支える気力というか腕力というか,それらの源が勇気という気がしています。
さて,本題。
***
まず,画像からご覧ください。
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_06321854.jpg
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_06325930.jpg
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_06330441.jpg
おりぞめの紙で作った筆箱です。手は小学6年生の子どもたちです。
大田智美さんが小学6年生と〈おりぞめ筆箱を作る〉を授業で世界初にした報告です。
***
〈おりぞめ筆箱〉は知代さんが2019年5月に開発して,あちらこちらで伝えて,今年は,zoomのワークショップなどで取り組みました。わたしは,横で見ていることが多く,この筆箱のワークショップがきっかけで〈おりぞめパネル〉を作ることになりました。
〈おりぞめ筆箱〉は学校での子どもたちの教材としては難しいと考えました。その大きな理由は,筆箱のふたがきちんとできるのを作るのが難しいので,できる子もいるけれど全員が納得する出来になるかどうかとなれば確信を持てなかったのです。
専門的な話になりますが,ふたがきちんとできるためには〈合口(あいくち)〉が重要になります。
合口というのは元はさやに入っている鍔(つば)のない短刀のことです。普通刀は鞘に納めるときに鍔のところで止まります。しかし,鍔のない短刀は刃を入れる鞘と刃のついた柄がぴたりと合うようになっています。
箱作りで合口という場合は,もちろん,短刀のことではありません。筆箱のペンなどを入れる方を〈身(み)〉と言い,〈蓋(ふた)〉と区別します。身と蓋が同じ大きさや身が大きすぎては蓋ができません。そして,蓋が大きすぎるとガサガサ過ぎて筆箱としては使いにくいです。ここで身と蓋がぴたりと合うことが重要です。これを〈合口〉というのです。
それと筆箱のふたのことでいえば,右左を逆にしてもふたができるようになっていなければ,ストレスがたまります。すなわち,身と蓋の合口があっているということはどちらも正確な四角形になっている必要があります。
***
子どもと一対一とか少人数であれば見守り,必要であれば手伝えるとは思いますが,多人数の授業であれば難しいだろうなとわたしは思いました。
しかし,身と蓋を合わすということをしなければ,身だけ,ふただけとなれば作ることができると〈おりぞめパネル〉というぷらんをつくりました。箱作りの基本は筆箱とおりぞめパネルは同じです。染め紙の貼り方が筆箱より簡単になっています。
どういうことと思った人にはやって見せればすぐにわかるのですが,筆箱の身やふたに染め紙を貼る時,うまく貼らないと紙の厚みなどで合口が合わなくなることがあります。しかし,おりぞめパネルには〈合口〉というのがないので厚みが出ても問題ありません。合口のための染め紙の貼り方をする必要はないので簡単にできるというわけです。
A4用の板目紙から正方形を作るという方法とこれだと25cm角のおりぞめ紙を貼れるということでプランにして,このブログでも発表しています。
***
大田さんは筆箱づくりのワークショップに参加されて筆箱づくりにはまりました。そして,〈おりぞめパネル〉のプランを子どもたちと授業で世界初に実施してくれました。
その大田さんが子どもたちと筆箱を作りたいというので,協力をしました。というのは,わたし自身は知代さんが作っている筆箱では授業では無理だろうと思いました。そして,知代さんに協力を得ながら,大田さんにできるプランを考えました。
まず,厚紙。知代さんはある程度の厚みのある丈夫な紙を使っています。それは,筆箱としてある程度の質の高さを求めるからです。
わたしは授業として,作った子どもたちが納得できればいいと思ったのです。
そのモノを作る目的を三段階に分けて,プランを位置づけました。
第一段階…自分が使う→自分に通用
第二段階…相手のために作る→家族や知人に通用
第三段階…例えば,売る商品→社会に通用
まず,子どもたちが授業で作るのは,社会で通用するような売り物でなくてもいい。しかし,だからと言ってどうでもいいわけではない。筆箱としての合口や強度や見た目は子ども自身が納得できるレベルでなければならない。
と考えました。簡単に言えば,〈蓋がきちんとできることを楽しめればいいな〉と。
まず,はじめに,材料を〈おりぞめパネル〉と同じA4用板目表紙を使うことにしました。これだと厚みが少なくなるので,合口を変えて,子どもたちが取り組みやすいようにボディを少しだけ小さめにして型紙を作りました。
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_10352687.jpeg
この型紙を印刷して板目表紙に貼り付けて使います。しかし,もしかして,直接印刷できないかと家のプリンターでやってみたら,板目表紙によってはできるのもありました。厚みの微妙な違いでできたりできなかったりするのかもしれません。輪転機などでできたりするかもしれないとは思いますが,大田さんは厚紙印刷はできなかったので,型紙を印刷して貼り付けました。(画像は厚紙に印刷したものです)
染め紙用の型紙も作りました。二種類作りました。
すでに染めてある紙を使う場合と染め紙から作る場合です。
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_10353507.jpeg
A4に印刷してあるのは四角に切り出して,染め紙の黒い部分をホッチキスで留めてから黒い部分を切り取ります。おりぞめシトラスリボンの切り紙の型紙と同じ方式です。横の25cm角のはおりぞめ用紙にそのまま印刷して,これを染めて使います。今のインクジェットプリンターのインクではおりぞめしてもにじまないでそのまま使えます。黒いところは切り取るので問題ありません。(染め紙の方は中の十字や線はいらないのではとも思います。これはこれからです。)
大田さんは染めてある紙を使ったのでA4の型紙を切り取って使いました。
***
子どもたちがするということで,注意書きも添えました。
2021年2月21日の注意メモ
①染め紙は半分にして使う
②まず身の方を完成させる。そのため,身の厚紙,染め紙の半分,身の染め紙型紙以外は
すべて引き出しに入れるなどして見えないようにする。
③染め紙型紙は四角い線でまず切り取る
④切り取った型紙を染め紙の上において四方が同じようにはみ出すように調整してからホッチキスでとめる。
(周囲にはみ出した紙を切る必要はない)
***
大田さんの報告。
昨日、ついに!子どもたちと筆箱を作りました!
染め紙の型紙のおかげで、2時間で全員完成しました!
思っていたより早くできて、ビックリです。
パネル作りを先にやったので、その経験が箱作りにかなりいきていました。
のりはこっちで用意しました。
マスキングテープもカモイの15mmのものを、こちらが用意しました。ある程度の長さを切っておいて、子ども自身で必要枚数に分ける、といった感じです。
あとは、子どもたちが持っているハサミとカッターでやりました。
苦戦したことや、想定外だったことは…
・厚紙をハサミで切るのが時間かかったこと→ハサミそのものが切りにくいのもありますが、厚紙を切る経験があまりないのもあると思います。
・染め紙が型紙より少し大きいため、はみ出た部分を切る子がいたこと→気づいた時点で、切らなくていいよ、切るのは黒い部分だけだよと再度念押ししました。
出来上がり、細かいところを見たら気になる人は気になるかもしれませんが、子どもたちはみんな大満足でした!
さっそく筆箱の中身を入れ替えてました。みんなすごくテンション高くて、今度は筆箱作りを意識したおりぞめをしたい!と言い出しました(笑)
俊樹さんと知代さんにお礼を言いたいと、しきりに言ってました。
また、筆箱作りをした(授業を受けた)世界初の子だよ〜と言ったら、ますます大騒ぎで(笑)かわいい子どもたちです。
この様子だと、卒業までにもう一度やりたいと言うにちがいないので、おりぞめと筆箱作りをやれる時間を何とか作ってあげたいと思います。模様違いの組み合わせの筆箱も作りたい、友だちと交換したい…と、いろいろ言っていたので、実現させてあげたいです。
これで、小学6年生なら筆箱作りはできる、という見通しができました。俊樹さんと知代さんのおかげです。本当にありがとうございました!
卒業前のいい思い出になったと思います。
写真を添付します。子どもたちもですが、私もすごく楽しかったです!
子どもたちの喜んでいる様子が伝わる写真が添付されていました。このブログには載せないので,「イェーイ」などと言いながら手で筆箱を誇らしげに持っている姿を想像してみてください。
作っている様子などの画像を載せます。
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_11430472.jpg
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_11431246.jpg
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_11432248.jpg
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_11432732.jpg
授業で〈筆箱つくり〉…大田さんのレポート_f0213891_11433367.jpg
子どもたちの感想です。
体育の時間だったのですが,雨のため,筆箱づくりとなりました。染め紙は以前に染めてあったものです。
では,どうぞ。
●筆箱うれしいです!!体育もやりたかったけど雨降ってよかったかも。折り染めを染めるのもそれで筆箱を作るのも楽しいです!!
●今日の筆箱つくりたのしかったです。途中で,いろいろまちがえたけど最後きれいにできてうれしかったです。また作って,親とかにあげたいです。
●体育ができなくて悲しいなと思っていたら,パラダイスでした!筆箱は作れたしたのしかったです♪
またおりぞめを染めて筆箱を作りたいです♡
●今日は図工がありました。本当に本当に本当にほんとっうにめっちゃ楽しかったです。いつものやつよりやっぱりちょっと難しかったけど,結構うまく作れたのでよかったです。家族にじまんします。世界初が上手につくれてよかったです!!!
●世界で初めておりぞめふでばこを作って,とても楽しかったです。かわいくできて,うれしかったです。
●今日は思ったより筆箱が上手に出来たのでよかったです。
***
大田さんからの続きのメール。
筆箱ですが、パネルのように、手順があれば、誰にでもできるようになると思います。
私は自分がいくつも作った経験があったのと、準備する時間的な余裕がなかったので、私の手元をプロジェクターで映すことしかできませんでした。それは子どもたちには不親切だなと反省しています。手順を板書していたら、2時間では終わらなかったかもしれません。
でも、2時間で出来た、というのも良かったかもしれません。完成した、蓋が閉まった、それが子どもたちにとっての大きな喜びでもあったので。
この楽しさをたくさんの人に味わってもらえるといいなと思います。
型紙は、学校のプリント等に使うA4のいわゆる普通のコピー用紙です。ホッチキスで字の部分を止めて切りました。ホッチキスも時間かかりそうだったので、けっこう私が手伝いました。ホッチキスも今の子はあまり使うことがなくて、うまくできないです。もちろん自分でやってもいいし、先生にやってもらってもいいし…という選択肢を提示しました。大半が早く作りたくて、私のところに来てましたが(笑)次やるときは、自分たちですると思います。
あの型紙の存在は、かなり大きいです。歴史的発明だと私は思っています。格段に作りやすくなりました。
合口幅も大丈夫でした。蓋が閉まらない子は1人もいなかったので、良かったです。
大田さんのクラスで筆箱づくりをするというので,知代さんとわたしも協力しました。三人でzoomで作選会議をしました。その中で,染め紙の型紙をホッチキスで留めてするということになり,わたしが型紙を製作する中でボディを小さめにするなど変更して作成し,それを大田さんにメールで送り使ってもらったというわけです。
わたしも染め紙の型紙は大発明だと思っています。直近におりぞめシトラスリボンの切り紙の型紙を作ったことが大きなヒントになりました。
今回は,大田さんが筆箱つくりを体験していることなど条件が恵まれたこともありますが実施してできたということを受けて,よりハードルを低くしたプランができそうな予感がしています。
おりぞめパネルを作った次に筆箱作りとすすめることでものづくりのたのしさも体験できると思います。
おりぞめパネルで学んだカッターナイフで直線に切る,折り筋をつけるという技術が筆箱の箱作りに役に立ちますし,染め紙の貼り方も基本的には同じです。合口のためにていねいに,違うやり方も出てきますが,それは蓋をするための技術と思えば,学びがいのある技です。
おりぞめパネルで終わってもいいし,筆箱まで進んでもいい。そして,何よりおりぞめした紙を使うというのがいいです。
去年の6月には筆箱を授業でしようとは思っていもいなかったわたしです。というか,筆箱はできないけれど,それなら〈おりぞめパネル〉と考え抜いて作ったプランです。そのプランの続きとして〈筆箱つくり〉ができるとは思ってもいませんでした。
今のところ,指導する人は,おりぞめパネルと筆箱つくりを体験することが条件だと思っています。
というのは,染め方の場合は,〈ちがいはあってもまちがいはない〉と許容範囲がかなり広いです。しかし,ツカイカタの方は,筆箱でいえば,蓋ができなければ,筆箱としては失敗です。その時に直すということをするためには指導者が作れることが必要な気がします。もし,できないときは指導者が手伝って作り上げることができれば,わたしはそれでもいいと思っています。そのためには,筆箱つくりの経験者の方がいいと今のわたしは思っています。
***
興味のある方はぜひ,わたしまでご連絡ください。ただし,今は,まだ誰もやっていない状態に近いので,時間と手間がそれなりに必要なこと理解しておいてください。
***
大田さん,誰もやっていないのにやってみようというその勇気に感謝します。そして,子どもたちにも感謝です。ありがとうございました。





by orizome | 2021-03-10 12:09 | 製品を作る | Comments(0)

紙に染料をつけて染めるものづくりの<おりぞめ>噺。ものづくりはたのしさつくり。おりぞめ染伝人(山本俊樹)メールアドレス orizome●live.jp
by orizome

以前の記事

2024年 12月
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月

最新のコメント

ご無沙汰しております。私..
by 山の住人 at 00:11
ありゃっ! 「楽」だと思..
by 戸田道代 at 16:28
こんな切りそめ紙もあった..
by 戸田道代 at 11:22
> 船迫新治さん あり..
by orizome at 14:52
たまモノが! 出版..
by 船迫新治 at 12:15
横山さま ありがとうござ..
by orizome at 18:57
春の校内掲示はたまモノで..
by 横山裕子 at 16:50
> 戸田道代さん 書き..
by orizome at 05:10
> 船迫新治さん あり..
by orizome at 05:09
書きたくなる紙がステキす..
by 戸田道代 at 17:14

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ファン

ブログジャンル